人類が絶滅する6のシナリオ

 

人類が絶滅する6のシナリオ: もはや空想ではない終焉の科学

人類が絶滅する6のシナリオ: もはや空想ではない終焉の科学

 

 

これも東京往復中に読了。
 人類が絶滅するとしたらどんな原因があり得るか。予想、というより、最悪のシナリオを考えてみようという試み。取り上げられる要因は、(1) スーパーウイルスによる新型感染症の大流行、(2) 過去の生物の大量絶滅を引き起こしたような環境の激変、(3) 気候変動、(4) 生態系の崩壊、(5) バイオテロリズム、(6) コンピュータウイルスによるテロ の6つである。
 1の新型感染症は偶然の産物だが、すでに予測されていることであり、それなりのモニタリングと対策準備をするしかない。2のたとえば隕石落下などはまあ仕方がない。残りは4つとも人間が引き起こすもので、5と6は悪意ある人間の手で起こすことがだんだん容易になってきており、警戒と準備が必要。ISISの登場である意味現実的になってきたとも言える。
 だがむしろやっかいなのは3と4かもしれない。だれにも悪意はないのだけれど、だれもが犯人であり、止められる見込みがない。4の生態系の崩壊については、先に読んだ「捕食者なき世界」と同じ話が含まれていて、すでに上位捕食者の大半は死滅していることがもたらす悲観的結果にも触れている。
 いずれのシナリオも荒唐無稽でなく、いずれ程度の差こそあれ起こるであろう未来の災厄である。私たちは予測して準備しつつ、打てる限りの手を打ってできるだけ防ぐ努力をし続けるしかない、というのが著者の結論である。大いに同意するが、現実にはこうした予測に対し、それが正しいか正しくないかという議論になってしまうことが多いように感じ、それが残念だ。無駄になればいいと願いつつ、最悪への対策を準備することが認められる社会でなければならない。