捕食者なき世界
- 作者: ウィリアムソウルゼンバーグ,William Stolzenburg,野中香方子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/05/09
- メディア: 文庫
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新幹線で東京往復中に読了。
生態学者なら誰でも知っているロバート・ペインのヒトデ除去実験から始まって、自然界における最上位捕食者の役割と、それが失われて起きる事態の深刻さを訴える本。生態学の教科書であってもいいような内容だが、研究者が書いた本と違って、現場で調査に取り組む研究者の姿が生き生きと描かれ、発見された成果もじつに生々しく示されている。とても面白く読んだ。
キーストーン種と呼ばれる重要な捕食者が取り除かれると生態系全体ががらっと姿を変えることはペインの実験で知られるようになったが、それと同じ現象が海でも陸でも地球の各地で起きていることが繰り返し示される。そしてなにより不吉なのは、すでに地球上で大半の最上位捕食者はすでに失われ、あるいは絶滅に瀕しているということ。そのことが世界の生態系にもたらすのはなにか、ということが警告されている。
この本に出会ったのは、自分の専門に関係するからでも、同分野の研究者から紹介されたからでもない。去年卒業した社会学部のゼミ生が面白いと勧めてくれたのだ。文系大学の学生が普通興味を持つ分野とは思わなかっただけに、とてもうれしかった。ちなみにその学生は卒業後猟師を目指すと言っていた。この本を読んで、なるほどと思った。