国産割り箸

大学生協主催の吉野割り箸工場見学ツアーに参加してきた。去年の秋から食堂の割り箸を国産材に切り替えた生協が、もともと今年五月に計画したのだが、インフルエンザのせいで延期されていた。そのため、当初参加予定していたゼミ生はのきなみ行かないし、申し込んでいた環境サークルの学生はドタキャンするしで、結局学生は1人も参加しなかった。


奈良県吉野の国栖(くず)までバスで2時間。山あいの小さな町に、かつて100軒以上あった製箸工場が今では四十数軒しかないという。ほとんどは零細企業だが、見学させてもらったのはその中でも比較的設備の整った大きめの工場だった。かなり機械化ができていて、少人数で生産ができる。しかし、材料があくまで端材なので、どんどん大量生産できるわけではない。

こういう端材を材料にして



まずこんな薄い板にする。幅はまちまち。



その板を機械で切断して箸に加工していく。

短時間で使い捨てられる割り箸は、環境問題への取り組みの中でやり玉にあげられやすい。たしかに、現在日本で使われている年間300億本といわれる割り箸のほとんどは中国製で、その生産のために森林が皆伐されていると聞く。一方で、ここ吉野の製箸業者は、杉やヒノキの丸太から角材を切り出したあとに残った端材だけを材料にしている。煮沸や乾燥のための燃料にも、削りクズやおがくずを使用しており、使わなければ廃棄物にするしかないものを有効活用しているということから、国産割り箸はきわめてエコな製品ということができる。

幸いこのごろでは国産割り箸への理解も進んできている。しかし、端材を材料にするためには、まず本体の木材が売れなければならない。木材価格が低迷し、国産材がまともに売れない状況では、いい端材をたくさん確保するのも難しく、規模が小さいこともあって、大手からの注文には応えられないのが現状だそうだ。ちなみに、間伐材は材料としては向かないという。これが使えれば、山の手入れも進むのに、と思ったのだが、ここの人たちはあくまで端材から作ることにプライドを持っておられるように感じた。

割り箸問題も、より大きな木材需給の問題と合わせて考えるべきものらしい。国産木材が再び有効に利用される日が来るまで、あの小さな割り箸工場たちが存続してくれることを祈りたい。