学力低下、てか?

最近どこの大学でもよく言われる言葉、学力低下。「まったくこのごろの学生はひどいもんだ。」なんていう声をよく聞くが、それはほんとに裏付けのあることなのだろうか。
大学教育学会に行ったときに思いついて、手持ちの成績データでそれが示せるか試してみた。もし、ある年の入学者から急に学力が低くなったなら、その年の1回生の成績は上級生に比べて著しく低いはずだ。1回生から4回生まで広く受講している私の大講義の試験結果なら、それが検出できるはずだ。
学年別の期末試験結果の平均値を、2000年以降の15の試験について比べてみた。全体的に見て1回生はそれ以外の上級生に比べて若干平均値が低いが、これは大学の授業に対する慣れの違いと見るのが自然だろう。その1回生と上級生の差が、ある年から急に大きくなったというようなことはなかった。つまり、2000年以降では学力低下が顕著に現れているとは言えなかった。
もちろん、学力低下というのはもっと長いスパンで進行しているのかもしれないので、これだけでなにかが言えるわけではない。でも、学力低下というようなことに本気で取り組むなら、それなりにしっかりしたデータに基づいて、どこがどのように変化しているのか、根拠に基づいた議論をすべきだ。大学生についてのそういうデータは果たしてあるんだろうか。ちょっと疑問だ。