生分解性樹脂による緑化

今日の朝日新聞朝刊に載っていた記事。

樹脂チューブで砂漠を緑地に 東レが新技術
http://www.asahi.com/eco/OSK200811200090.html

内モンゴルの砂漠で、生分解性樹脂のポリ乳酸でできたチューブを格子状に配置し、砂の動きを抑えるようにしたら1年半で大地が緑になった、という話。生分解性だから放っておけばいずれ分解するので回収する必要もないという。

写真を見たところ、これはまさしくわが緑化隊がやった「草方格」そのものだ(これとかこれを参照)。NPO緑化ネットワークでやっている方法は、わらをスコップで大地に差し込み、2メートル間隔の格子状に並べていくというもの。たしかに、これをやれば砂の移動が弱められ、1年後には草が生えてくる。しかしその前提には、放牧されている家畜を排除し柵で囲いこむという作業が必要だし、雨期には草が生えてもその多くは冬に枯れ、強風でほとんど吹き飛ばされる。夏の一時的な草の緑を見て「緑化できた!」と喜ぶのはまちがいだ。永続的に緑が残るようになるのは、多年生の植物が根付くようになってからだ。それには時間がかかる。

「砂漠の緑地化は植林が一般的だが、より安価で、作業時間も短くて済むという。」

という朝日の記述は大きな誤解だ。これをしなければならないような砂地の場所に直接植林することはありえない。しても砂に埋まるか、逆に砂が飛ばされ根が露出して枯れてしまう。このチューブなり稲わらを使った草方格なりで砂の動きを弱め、草がある程度生えて大地が安定してから、その場所に樹木の苗を植林するのだ。だから、比較すべきはこの樹脂チューブと苗木ではなく、樹脂チューブと稲わらである。どちらが安価か、考えるまでもないだろう。