手短に話せない話

あなたの話はなぜ「通じない」のか
山田ズーニー著『あなたの話はなぜ「通じない」のか』(筑摩書房, 2003)読了。

人とコミュニケーションを図るのは簡単なことではない。効果的な意思疎通のためには、念頭に置くべき基本技術がある。それを一所懸命にわかりやすく解説しようとしてくれるこの本は、読んでいくとどんどん腑に落ちていき、それを誰かに伝えたくなる。

筆者がほぼ日に連載している『おとなの小論文教室』が好きで、学生にも何度も紹介したし、プリントアウトして配ったりもした。しかし反応は今ひとつだった。先日、NHK教育の「日本語おもしろ塾」に著者が出演して、4回にわたってこの本の内容に沿った話をしたが、そのときもいまひとつしっくりこなかった。それが、本の形でゆっくり読むと、しみこむようにわかる。

どうやら、この人のコミュニケーション論は、かいつまんでしまうとその魅力を失ってしまうという特徴があるようだ。わかりにくいのではない。具体例を使い、自分の苦悩の歴史を交え、その上でとつとつと語られるコミュニケーション技術はとてもわかりやすい。結局、そこに書かれているすべてが、筆者の意図を読者に伝えるために不可欠な要素であり、要点だけ取り出すとその説得力を減じてしまうことになるような気がする。

たぶん、筆者もそのことは気づいているのだろう。だから、次に『考えるシート』(講談社, 2005)を出したのだろう。ゼミで使うならこっちだな。