すごい進化

すごい進化 - 「一見すると不合理」の謎を解く (中公新書)

(鈴木紀之著 中公新書 2017年)

この手のタイトルはこのごろ流行りだが、なんだかなぁ、とちょっと引きつつ読んでみたら、中身は進化生物学ど真ん中。それもわりとなじみのある話が多いなと思ったら、著者は私と同じ研究室の出身なのだった。

 自然選択によって完璧に作り上げられた見事な進化の例、ではなく、むしろいい加減で不合理で不完全に見える現象が実は極めて合理的な進化の結果なのだ、という例を中心に据えている。そして、従来信じられてきた仮説がどうやら間違いで、まったく別の角度から新たな仮説を作り上げていく研究過程の醍醐味を、かなりわかりやすく書いている。まったくの素人がどれだけ面白く読めるのかはわからないが、最近不勉強な私は興味深く読むことができた。

 とくに目を見張ったのは、性の進化に関する川津の新説だった。なぜオスがいるのか、なぜ無性生殖が可能なのに有性生殖がメジャーなのかという進化生物学最大の問いに対する、まったく新しいアプローチ。説明を読む限り、目から鱗で納得できるものだった。まだ広く受け入れられていないようだが、著者が推すだけのことはあると思った。