ねずみに支配された島

ねずみに支配された島

(ウィリアム・ソウルゼンバーグ著 文藝春秋 2014年)

 

広島大学出張中に読了。

前著「捕食者なき世界」がすばらしく面白かったソウルゼンバーグ。この本も期待に違わず大変面白く一気に読ませてくれた。

世界中の島々で繰り返される、外来動物の侵入と在来鳥類等の大量死。それに気づき、滅び行く生物たちを救うために必死に抗う人々の終わりなき苦闘の物語である。主な舞台はニュージーランド、それに加えアリューシャン列島、カリフォルニアなど各地に渡る。外来動物として問題になるのは主にねずみだが、他にもネコ、キツネなども登場する。何千万羽という鳥の大群が、わずかな数のネズミの侵入で絶滅に向かう現実が描かれる。多くの場所で手後れなのだが、いくつかの島でネコやネズミを駆逐して絶滅しかかった鳥を回復させることに成功する。しかし、一箇所で成功しても別の場所で同じやり方が通用するとは限らないし、新たな障害も発生する。関係者の苦悩が切実に感じられる。

外来種問題を書いた本は山ほどあれど、これだけ読ませる本はなかなかない。現場で必死に苦闘する人々に焦点を当てて、彼らの物語として描いている。外来種問題はそれなりに知っているつもりだったが、ネズミと鳥のことはもともとあまりなじみがなかったので勉強にもなった。