魚はエロい

〈オールカラー版〉 魚はエロい (光文社新書)

(瓜生知史著 光文社新書 2016年)

 

「昆虫はすごい」がヒットしたせいかどうかは知らないが、こういう生き物のちょっと面白い話を紹介する手軽な本がいろいろ出ている。「すごい」ではもう目立たないので「エロい」ときたかと思ったが、基本的に繁殖生態の話なのでエロ中心に偽りはない。

 

いろいろおもしろい繁殖にまつわる話が読めると思っていたし、たしかにたくさんの話が詰め込まれているのだが、・・・なんだろう、あまり面白くないのだ。印象に残った話がひとつもない。最期まで読むのがやや苦痛ですらあった。多少生き物のことを知っていて驚きが少ないからだろうか。

 

たぶんそうではないのだろうと思う。こういうのは最初から「エロいぞ。すごいぞ。おもしろいだろ。」と言われながら話を読んだのでは興ざめなのだろう。淡々と、あくまでまじめに、知らん顔で語る話が、実はよく考えるとエロかったりとても変だったりしたときにはじめて「クスッ」という笑いが生まれるのではないだろうか。著者みずからが触れるにしても、まじめな描写の中に唐突に場違いなエロ描写があってこそのおかしさなのかもしれない。編集方針の失敗、のような気がする。

ただこのへんは人ごとではない。生物学の授業ではいろいろな生物の面白い姿や生態を紹介することが多いのだが、こちらが面白がっているほどには学生に通じていないのかもしれない。エロ方面もよく使っているので、気をつけないと。

 

もうひとつ残念なのは、「オールカラー版」ではあっても、ひとつひとつの写真がひどく小さくて、もしかしたらとても貴重な写真なのかも知れないがほとんどなにが写っているのかわからないということである。見えないのなら、わかりやすいイラストの方がよほどいいだろう。これも失敗。