アドラー心理学
アドラー心理学については、ずいぶん以前に知人からその名を聞いたことがあったという程度なのだが、作者の向後千春氏については、私が教員に成り立ての頃に彼のブログをよく読んでいろいろと勉強させてもらっていた。そんなことがあったので、どんなことを書いているのかと興味を持ってKindle版を購入した。
読んでみると、アドラーという人が何を考え何を提唱したのかということが非常にわかりやすく平易に解説されていて、すんなりと読めた。というか、そうだったような気がする。気がする、というのは、次の本を読んだらそのインパクトできれいさっぱり忘れてしまったからだ。
その「次の本」がこちら。
なんだか凡百の自己啓発本のようなタイトルでもともと興味はなかったのだが、実はこれもアドラー心理学の入門書だと知り、前の本との関連で読むことにした。
自分という人間が嫌で仕方がなくて、変わりたいと思いながら変われずにいる若者と、世界はシンプルであり人は誰でも今すぐ幸せになれると説く哲学者との問答、という設定で書かれている。 その哲学者の説く考え方がアドラー心理学。反発する青年と辛抱強く理を説く哲人の対話という形式が、意外なほどすんなりと受け入れられ、かつスムーズに理解を進められる。前の本の整理された教科書としてのわかりやすさとは異質のわかりやすさで、腑に落ちるという点ではこちらの方がかなり上であった。
疑問を抱かせて、その疑問を解消していく、というスタイルの方が深い理解を導くということは、講義をする上でも留意すべき点だと思った。
で、私はアドラー心理学を勉強して幸せになれたかというと、どうやらもともと自分のものの考え方がアドラー的なようで、新たな発見をしたというよりは、肯定してもらったという感じだったかもしれない。