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裏山の奇人 −野にたゆたう博物学−

裏山の奇人: 野にたゆたう博物学 (フィールドの生物学)

裏山の奇人: 野にたゆたう博物学 (フィールドの生物学)

絶対におもしろいに違いない、と思って買ったのだが、思った以上におもしろかった。結構な密度があると思ったのに一気に読んでしまった。やっぱりこの人はすごい。

この著者は「III月記」というサイトで、いつも見たこともないような小さな虫の見事な生態写真を公開している。その写真の腕前は他の追随を許さないし、書かれている文章から生き物たちへの深い愛と博識がうかがえる。この本ではその著者が、どのような環境で生まれ育ち、どんなふうに生き物と関係を結んできたのかが明らかにされる。身近な環境に暮らしている、けれど並大抵の人では絶対に見ることのできない小さな生き物たちと深くつきあう著者。人間とのつきあいが少ないのも納得させられる。論文の謝辞に2次元女性の名を書こうとした話には笑ってしまった。

なにがどうなのかうまく言えないが、文章はたいへんおもしろく読める。研究者にありがちな無味乾燥な淡々とした文章とは違う。この本にも登場する著者の今のボスが書いた本を先日読んだが、文章力はこちらの著者の方が圧倒的に上といえる。

これほどの探究心と文章力を持った研究者が、さらに写真技術も備えていることで、私達は見たこともないような小さな虫たちの世界の映像を見て、一端を知ることができる。それは、とても幸せなことだと思う。この著者が、今後もこうした活動を続けられるような職をいずれは得て、著者自身も尊敬するという南方熊楠のようにあまたの発見を積み重ねてくれることを祈りたい。