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昆虫はすごい

昆虫はすごい (光文社新書)

昆虫はすごい (光文社新書)

 人間社会に見られるたいていの現象は、昆虫がずっと昔からやっていることだ、というような触れ込みで昆虫の面白生態あれこれを語る一冊。もちろん、昆虫のことをよく知らない読者に向けた本であるが、学生向けに生物の講義をするときに盛り込んだら良さそうな小話がいくつもあって、私にも役に立ちそうだ。旅をする、まねる、恋する、まぐわう、狩る、農業する、戦争する、奴隷を使う、居候する、などなど、行為をキーワードにしてたくさんの昆虫の生態を書き並べてある。うんちくとして語るネタがたくさん入手できる。

 ただ、ではこれが昆虫を知らなかった読者にとってどれだけ面白いかという点については、正直わからない。書き方は科学者らしく正確さ・客観性を重んじ淡々としていて、たまに入る人間社会に例えた表現もかなり控え目。そこが面白いところなんだからもっと羽目を外してもいいのではないかと思ったりもするのだけど、進化の結果として本能で動く昆虫と、理性や倫理がからむ人間との根本的な違いがあり、著者の科学者としての矜持がそれを許さないのかもしれない。

 そんなわけで、この本は昆虫をある程度知っている人や好きな人には面白く読まれるだろうが、詳しい人にはやや物足りなく、全然知らない人を虫好きに変えるほどの力はないように思う。売れるんだろうかと余計な心配をしてしまったのだが、Amazonで1位になっているところを見るとよく売れているらしい。

 あと、せっかくたくさん素晴らしい写真を載せているのだから、せめてKindle版ではすべてカラーにしてもらいたかった。白黒ではよくわからないものも多くもったいなく思った。