ときめき昆虫学

ときめき昆虫学

ときめき昆虫学


以前、にこにこ学会βの「むしむし生放送」を見てがぜん注目したメレ山メレ子氏。彼女の書いた本がKindle版で出ていたので思わず買ってみた。「あなたの中に眠る“虫スイッチ”を押しまくる」という言葉が果たしてどのくらいのものか、と興味があった。とはいえ、一般人とは言い難い自分が読んでもその効用の実証にはならないが。


私は、虫の研究者ではある(あった?)が、「虫屋」ではない。専門外の虫のことはろくに知らないし、昆虫採集もほとんどしたことがない。その点で、この本に出てくるような虫にとりつかれた人々とは一線を画す。しかし、虫にアレルギーはないので、一般人の前で虫を見つけるとあえて手にとって「かわいい」とか言ってみる。自然科学の授業で、青虫毛虫の顔写真を並べて見せたりもする。毛嫌いされる虫の世界の面白さを普通の人に伝えたいと思っている点では、この著者と近いところもあるか。
ただ、この著者の行動力ははんぱではない。昆虫大学を主催したり、こんな本を書いたり。この本を読めば、彼女が虫のために日本中、あるいは海外までも、どこでも飛んでいくことがよくわかる。お仕事されているのに、その行動力と身軽さに感嘆する。専門家と普通の人々の間をつないでくれるこうしたインタープリターとでもいう方の存在は貴重だ。


で、読んでみて、印象に残るのは虫の話よりも虫にとりつかれた人々のおもしろさの方だった。まあ、どうしてもそうなるだろうな、とは思う。写真は少な目なので、虫のほうはなかなかイメージしにくいこともあるかもしれない。へんな虫に熱狂するへんな人々に興味を持ってもらえれば、結果としてその虫にもときめいてもらえる・・・のかな?


それにしても、彼女がなにかの虫に興味を示すとたちまち情報が入ってくる虫ネットワークの存在がすごいと思う。