君のためなら千回でも

カーレド・ホッセイニ

君のためなら千回でも(上・下)

(ハヤカワepi文庫 早川書房) 読了。


アフガニスタンについて、何を知っているだろうか。何も知らない。テレビで見る戦争の映像から、不毛な乾燥した大地に、がれきに埋もれたほこりっぽい町などしか印象がない。

そのアフガニスタンの、在りし日の人々の暮らしぶり、習慣、ものの考え方、そしてそれがソ連の侵略で崩壊して混乱の時代になり今に至るその経緯。そうしたなじみのない事柄に豊かに触れることができる一冊だった。まさに異文化交流の感がある。異文化なんだが、名誉や家筋・血筋、慣習を重んじる人々の生活が、なんとなくなつかしく微笑ましい。
物語は、主人公の少年時代からの成長と苦悩と後悔と贖罪の道筋を追う。上巻は主に少年時代が中心で、なかなか読み進めなかったが、下巻に入って一気に読み切った。終盤は予想を裏切る展開で少々面食らう。しかし、なかなか気持ちよい読後感に浸った。