ダラムからの訃報

見覚えのある癖字で書かれた季節はずれのカードが届けられたとき、なんとなくそんな予感がしていた。アメリカ留学中下宿していた家の大家が亡くなったという知らせだった。渡米直後から4年間、父親のように温かく接してくれた人だった。去年のクリスマスはカードを出しそびれてしまった。

逆算してみると、当時まだ60代前半だったことになる。すでにリタイアして悠々自適の生活を送っていた。毎週のようにカジノへ行き、年に二回は長期旅行。どうしてそんなにお金があるのか不思議だった。家は大きくて、前半分に大家夫妻が住み、うしろ半分を大学院生4人でシェアして住んでいた。

屋根裏部屋は私のお気に入りのスペースだった。休みの日にもあまり出かけず部屋でごそごそしている私を、彼はなにかと気にかけてくれた。Atlantic Cityのカジノに連れて行ってもらったこともあったな。人生の節目を迎えた時、出がけに家の前で締めてくれたネクタイを今でも持っている。

あの家は、Googleストリートビューを使えば今でも見ることができる。いつでも、いつか、また会いに行けるような気がしていた。でも、もうあそこにも、どこにも、あなたはいない。

さよなら、ヘイウッド。