そろそろスローフード

センター試験の1日目。お仕事の合間にすいすいっと読み切ってしまった軽い本。

そろそろスローフード―今、何をどう食べるのか? (ゆっくりノートブック)

そろそろスローフード―今、何をどう食べるのか? (ゆっくりノートブック)

辻信一氏の本2冊目である。イタリアの食の思想などを紹介する島村菜津氏との対談をまとめたもの。この前読んだ『カルチャー・クリエイティブ』では、一人あたりの対談量が短すぎておもしろさが伝わらないと思ったが、こちらは丸1冊を一人との対談に費やしているので、二人のものの考え方がよくわかってやっぱり面白い。

スローフードというのは決して一部のグルメの趣味なんかではない。スローフードは、単なる食べ物の話にとどまらず、命との向き合い方であり、生活の場の楽しみ方であり、つながりを楽しむ生き方のことである。

前半、日本の食文化にアメリカンスタイルの食が侵略してきて、油、砂糖、食品添加物、遺伝子組み換え、というふうに加速度的に食の姿が変わっていく、という話が展開される。ここのくだりについては、つい反射的に、いや添加物も遺伝子組み換えも、そんなにはっきりと危険というわけではないと思うけど、と反論したくなった。
しかし後半まで読んでいくうちに、単に危険かどうか、という問題ではないのかもしれないと気づき始めた。食、という生命の根幹に関わる部分を、自分が主体的に関われない巨大な外部の力に握られてしまうことに対する抵抗運動。それがスローフードなのかも知れない。