ゼミ合宿in智頭町新田集落2

朝から大倉山登山。「初心者向け」「整備されている」「2時間半のコース」と書いてあるから気楽に考えていたら、けっこうきつい。プラスチック製の階段が整備されているのだが、あちこち崩れているところもあるし、傾斜がそうとうにきつい。先頭を歩いていたら、ずっとイノシシらしき蹄の跡が続いていた。けもの道かこれは。へとへとになってたどり着いた山頂ではハエとハチに追い立てられ、早々に引き返す。
智頭町はもともと「智頭杉」というブランド木材でかつて栄えた町である。この登山のあいだも、相当標高の高い所まで杉の木が植林されている。しかし、当然ながら最近では手入れがされておらず、そのせいか根こそぎ倒れて登山道をふさいでいる杉の木をずいぶんたくさん目にした。「スギやヒノキの植林地は、手入れをしないと山が荒れ地崩れを起こしやすくなる」というようなことを耳にしてなんとなくそういうものかと思っていたが、ここで初めてその現実を目にすることができた。

へとへとで帰ってきて、手作りのおにぎりをいくつかいただいた後、今度は宿の近くの植林地でスギの木の伐採を見学させてもらう。集落で長年林業をされてきた方が来てくださり、35年育ったスギの木を目の前で切り倒してくれた。出荷のために長さをそろえて切断したり、皮をはいで見せてくれたり、バウムクーヘンのようなきれいな輪切りをお土産用に切ってくれたり。しかし何より衝撃なのは、35年かけて育てたこのスギの木一本の値段がせいぜい5000円にしかならないということである。山の麓で平地のこの場所でも、伐採して運び出すのはそれなりの手間がかかる。よほど効率よく大量に切り出さなければ、手間賃にもならないというのが実感としてわかる。山の上まで手入れなどできるはずがないではないか。

その後、今度は森林組合の製材所の見学に行く。ここで木材はその大きさに合わせてさまざまな規格材に製材され、余った端材はおがくずにされる。大きな機械で流れ作業によって、丸太が余すところなく商品化されていくのだ。ただし、ここに集められている丸太は地元智頭町の材木ではなく、市場で購入してきたものだという。地元ではあまり伐採すらされていないということだろう。たしかに智頭町全体がそうとうに傾斜のきつい山地なので、経費をかけずに伐採するのは難しいかもしれない。皮肉なことだ。

夕食の前には、また別のまちおこし担当者による話があった。学生たちは疲れてお腹もすいていたが、とりあえず聴いていた。自分の住む地区をなんとかしたいという想いと、現実にはなかなかできることは限られているという苦悩の一端ぐらいはわかっただろうと思う。