08緑化隊隊長記7


植林作業は今日が最終日。民族大学の学生や、地元の住民も数人加わって、みんなでマツの苗を1600本植える。植え付けとバケツリレーのセットを、午前中2セット、午後も2セット。昼食も現場でとる。白酒が入る。

最後のバケツリレーが終わったとき、だれからともなく拍手がわきあがる。歓声が上がる。まだ終わりたくないと言う声がする。しかし雲行きが怪しくなってきた。感傷に浸るまもなく片付けに入り、石碑の前で記念写真を撮っていると雷が鳴り出した。さえぎるもののない砂漠での雷は、真剣に脅威である。トラクターやトラックが待っているはずの場所まで徒歩20分。ただでさえ歩きにくい砂地を小走りに行く。M田さんは本気で怯えていて、身をかがめながら全力で走っていく。それを笑いつつ、正直あまり笑えない状況になってきた。やっとトラクターの待つ道路まで出た頃には土砂降りで、これではとても荷台に載っていくわけにはいかない。すぐそばの農家に避難させてもらうことになった。

現地の農家の生活を間近に見る機会というのは今までなかった。雨のおかげで思いもかけないチャンスがきたわけだ。この家では、ちょうど夕食の支度中なのか、屋内のかまどで火をたいていた。燃料は実をとったあとのトウモロコシの芯。それが山積みになっていて、少しずつくべている。煮ているのはトリか何かの肉のようだ。壁には豚の頭蓋骨とウサギの毛皮がかけてある。中央の部屋には小さなベッドとソファ。寝るのに使われている様子だが、服や何やいろいろ散乱していて雑然としている。その服の下で鳴った携帯電話が家の状況にそぐわないように思うのは偏見だろうか。家具は、ガラスが割れてなくなってしまっているようなものが多い。ぶら下がっている裸電球は点いておらず、薄暗い。窓のガラスも割れているところがあり、今はともかく冬の零下30度をしのぐのは厳しいように思える。
雨が小降りになった。外に出てみると相当に気温が下がっている。雨に濡れてしまった体で風に吹かれて行けば必ず風邪を引くだろうということで、NPOの2台のトラックの座席に乗れるだけ乗せて、バスの待つ場所までピストン輸送をすることになる。たいした距離ではないのだが、道が悪いので時間がかかる。やせた犬とニワトリのいる前庭で、学生たちがこの家の子どもたちと遊びだした。キャーキャー言って追いかけっこする姿は何のちがいもない。思いがけないひとときを過ごした。
ホテルに帰って濡れた服を着替えて夕食に行く。民族大の学生の中には、着替えがなくて買いに出かけていた者もいたようだ。こちらの学生に呼びかければ余ってるTシャツのひとつぐらいあったろうに、気がつかずちょっと後悔。
民族大生との交流を優先してふりかえりはなし。夕涼みの散歩に出る。見上げると少しだけ星が見えているが、天の川はムリ。2年前はホテルから数分歩いただけで満天の星空だったのに。街灯が増えたというのもあるが、雨が降って気温が下がってもやがかかっているのだと思う。星見のチャンスはあと一晩しかない。