システムを変える

地球のなおし方

地球のなおし方

『成長の限界』を書いたメドウズの「システム思考」という考え方を紹介したくて枝廣氏が企画したという本。しかし読んでみて、根本的にその「システム思考」というやつがよくわかるかというと、ちょっと疑問。シミュレーションモデルを駆使して、どのタイミングでどういう変革をすればどういう結果になって、だからこういうことだけでは不十分で、むしろこっちを変えることが必要なんだ、というのをいくつものシナリオの分析で示しているが、一般読者がそれでシステム思考の重要性を理解するだろうか。
とはいえ、今の地球環境問題について、ちょっとくらいいじっても結果が変わらない部分と、少しいじれば大きく変わる部分をきちんと認識した上で、効果の上がるところに注力すべき、という考え方が大事だということはわかった。「できるところからとにかくやろう」という根性主義みたいなやり方に対する批判と言えなくもない。もっとも、その効果の上がる部分を確実に見いだすことができるのかどうか、そこが課題ではある。

覚え書きとして、第5章に挙げられた「システムに働きかける効果的なポイント」を記しておこう。

1. 変数(パラメータ):環境基準とか金利とか出生率とか
2. 負のフィードバック・ループの強さ:システムの自己修正能力を改善する。予防医学、情報公開、監視システム、内部告発者の保護など
3. 情報のフローの構造:新しい情報でなくても、既存の情報を伝えるべき場所に伝えるだけでフィードバックがかかるようになる。電気メーターを見えやすい場所に設置したり、有害排気物質排出量の公表など
4. システムのルール:地域通貨を減価型通貨(時間が経つと価値が減る)にすることで流通を促進した例など
5. システムの目的:室温を保つ、水量を保つ、などシステムの目的自体を変えれば、当然上の1から4まで全部変えざるを得なくなる
6. システムの前提となっているパラダイム:世界の仕組みに関する共通認識。金銭的価値と存在価値の関係とか、成長をよいこととする考えとか

あとのものほど効果は高い。1だけいじっても効果は限定的。しかし、システムは変化に抵抗する。4,5,6を変えるのは簡単ではない。そこでどうするか。第6章には、「平和的な変革に向けた五つのアプローチ」が挙げられている。

1. ビジョンを描く
2. ネットワークをつくる
3. 真実を語る
4. 学ぶ
5. 慈しむ

うーん、それしかないか。ま、そりゃそうだわな。しかし、その力を信じるのは、なかなか難しいな。