オープンコースウエア

MITの宮川繁氏による「マサチューセッツ工科大学OCWと、これからの大学教育」という講演を聴く。OCW (Open Course Ware)という概念は恥ずかしながら知らなかった。大学の授業をデジタル化して商品として販売するe-Learningビジネスに真っ向から対立するもので、授業の教材をすべて無償で世界に公開するというものである。

MIT OpenCourseWare  http://ocw.mit.edu/index.html

MITのほぼすべての科目がすでに公開され、世界どこからでもインターネットがあれば登録もなしに無償でアクセスできる。国連憲章にある「すべての人に、教育を受ける権利がある」という理念に基づく姿勢で、MITがそのモデルを作り、OCWコンソーシアムとして世界に波及している。気になる著作権についてはクリエイティブ・コモンズという考えに基づき、非営利目的なら自由に利用可能、ただ出典だけ明記することとされている。ビジネスにせずに自由利用にしたのでは、収入なしでコストだけがかかるわけで、それで成り立つのかと心配するが、新入生の35%が大学選びの際にOCWを参考にしたというデータもあるし、とくにMITの場合は先鞭をつけたことで各メディアに大きく取り上げられたという宣伝効果もあった。また、学生を指導する上でも公開されたものを補足として紹介するなど利用価値は大きく、また公開に先立って各教員が自身の教育方法を見直すきっかけになるというFD(Faculty Development)効果もある。そうしたものを総合的に見れば、儲かる当てのないビジネスモデルよりも、よほど大学の発展に寄与するものと考えられる。

それは、きわめてインターネット的な考え方で、無償で提供してみんなで共有することが結果的にみんなの利益になるというもの。目先の利益しか見えない人には理解できない世界かも知れない。しかし、すでにモデルができあがっているのだから、信じて加わればいいのだと思う。私も、すでにやってる以上の教材公開に踏み切るときだと背中を押された気がした。