恐怖による支配

遅ればせながら読了。まずストーリーとして、おもしろいのかなぁ、という程度。常に早く先を読みたくなるという点ではさすがクライトンではあるけれど、終わってみると、なんだこれでおしまいか、と。環境テロリストたちが極悪でしかもやたらハイテク機器を使いこなしているけれど、人物としてほとんど書かれることないまま消えてしまうし、善玉たちはスーパーマン的八面六臂の活躍だし。なんだかなぁ、である。
地球温暖化を既定の事実として喧伝しようとする悪玉側に対し、温暖化説がいかにもろい証拠の上に構築されているかを善玉の親分が実在のデータを引き合いに出して示して、主人公の認識を改めさせていく、という構成になっていて、「そうだったのか!」と軽い温暖化信者を転向させるくらいのパワーはあるのかもしれない。しかしこれに対しては各所で反論がすでに展開されているようなので、放っておいていいだろう。
なるほど、と思うのは、タイトルにある「State of Fear」(「恐怖の存在」という訳はちょっとどうかと)。世の中を都合よくコントロールするにはなんらかの恐怖の存在が必要であり、冷戦終結後に代わって登場した恐怖の対象が温暖化である、ということ。目新しい考え方ではないらしいが、うなずける気がする。コントロール、とまでいかなくても、「恐怖」は商売になる。それは、テレビ番組を見ていれば一目瞭然だろう。そして、その「恐怖」すら消費され、さらなる恐怖をもとめて誇大表現から捏造まで生み出されていく。それはあるなと思った。