複雑なBBQ

砂漠緑化の関係でメーリングリストに出した1通のメールに端を発した複雑な成り行きにより、見ず知らずの方の家を訪ねて高槻へ出向いた。行ってみると、よくわからない人たちがバーベキューの用意をしており、そこにもぐりこんでごちそうになった。私をその場所に導いてくれた唯一の知り合いは、急病により来ていなかった。飲んで喰っててきとうに人としゃべって、やっと目当ての人から本題の話を伺えたのは、到着してから6時間ほど経ってからであった。
話を聞きたかったのは、黄土高原生態文化回復活動に取り組んでいる、東大の安冨氏と大阪外大の深尾氏。深尾氏は病気療養中でゆっくりお話しできなかったが、安冨氏には取り組みについてプレゼンをしていただき、その取り組みの様子を知ることができた。黄土高原に暮らす人々の生活や、春先の耕起が植生を破壊し黄砂を生むことなどがよくわかった。
この活動の中心には、安冨氏の専門である「複雑系」が重要な位置を占めている。そこでは、人間社会は複雑系であり、目的を設定して手段を考え順を追って実行していく、といった「線形」のアプローチでは、環境問題でも社会問題でも解決するのは難しい、という認識が前提としてある。そのため、あらかじめ目的は定めずにとにかく現地に入り、地域の人々と相互に影響を及ぼしあう中から、創発的に活動を生み出していく、という「共生的価値創出」アプローチをとっている。
理屈はなんとなくわかる気がするし、外部の人間が勝手にあらかじめ目標を設定した上で地域の人々に働きかけるのがまずいだろうということはわかるのだけど、じゃぁ代わりに、と簡単に「共生的価値創出」アプローチをとれるかというと、そうはいかない。それをするには、その中にどっぷりと漬かってしまわないと地域の人々と同じレベルの主体になれないわけで、それは容易なことではない。まわりからちょこちょこと浅く関わるのが難しいアプローチだと感じた。自分にはそこまでの勇気も動機もないから。