これからの環境論

これからの環境論―つくられた危機を超えて (シリーズ地球と人間の環境を考える (12))
渡辺正著「これからの環境論」(日本評論社 2005)読了。「地球と人間の環境を考える」シリーズの第12巻にあたる。軽妙な会話形式で軽く読める。内容は要するに、代表的な環境問題トピックはどれも騒ぎすぎであり、とるに足らない問題である、という主張。酸性雨、温暖化、ダイオキシン環境ホルモンの4つがバッサリ斬り捨てられる。このうち酸性雨ダイオキシン環境ホルモンについては同意。いずれもすでに問題ではない。しかし地球温暖化については簡単に納得するわけにはいかない。IPCCのまとめたデータを疑うには相当に強力な反証が必要なはずだが、それは十分とは言えないし、温暖化の証拠が不十分だということは、だからなにも急いで行動しなくていいということにはならない。CO2濃度の上昇もその温室効果も資源の有限性もわかっているのだから、いずれ危機が来るのはわかっているはず。「何か予兆がくっきり見えて、本物だとわかってから腰を上げたって十分に間に合う。(p.226)」と楽観する根拠はどこにあるのか。問題はゆっくりとしか進まないと思うなら、対策の効果もゆっくりとしか進まないことになぜ気づかないのか。化学物質の問題に関する記述は正確だが、温暖化に関しては議論が雑な印象を受けた。