老害

今朝の朝日新聞養老孟司氏がまた書いている。森林認証制度をとりあげた「環境ルネサンス」のページで、「長い目でものを見よう」と題した囲みコラムで次のように言っている。

二酸化炭素問題として、温暖化をもっぱら人間活動のせいにするのも、いまの人が人間中心にものを考えていることの一例かもしれない。温暖化の本当の原因は、まだ不明だというしかない。

わかっちゃいない、とため息をつくしかない。だれが好きこのんで温暖化を人間のせいにしたがるものか。この期に及んで不可知を理由に対処を先延ばしすれば、あとで後悔する可能性が高まるだけだ。「長い目でものを見」て運命を受け入れよう、とでもいうのか。
たしかに、温暖化の「本当の」原因が100%まちがいなく二酸化炭素だとは言えないし、責任ある専門家はだれもそんなことは言っていない。当然自然変動の要素も部分的にはある。しかし、人間の出した温室効果ガスが大きく影響していると考えなければ説明のつかない温度上昇が起きている、ということを、IPCCが苦労してさまざまな角度から検討した上で結論づけてきた。今人間が理解しうることから判断して、二酸化炭素などの人為的温室効果ガスが温暖化の原因であると考えるのがもっとも確からしいから、その通りであると仮定してあとで後悔しないために今から対処しよう、ということを多くの国が合意したのだ。100%まちがいない、などと言えばそれは科学的ではない。なのに、100%確実でないからまだ不明だというのは、おろかな言い逃れでしかない。
養老氏は以前にも他の雑誌で同様のことを発言している。彼ほどの著名人がこんなことを繰り返し発言していると、温暖化対策をしたくない勢力にいいように利用されるのは必至だ。言ってもどうせ耳を貸さないだろうし、彼の言葉を鵜呑みにする人を減らすために地道な批判を繰り返していくしかないだろう。