iTMS

アップルの音楽配信サービス iTunes Music Store (iTMS) が始まってしばらく経つ。もともとそんなにCDを買う方ではなかった私でも、もう60曲以上購入してしまった。1曲150-200円という割安感と、自由に物色して試聴できることから、ハードルが低くなっている。

すでに以前から始まっていたことではあるけれど、こうした配信サービスが当たり前になってくると、いよいよ「情報にお金を払う」ことが普通になってきたという印象が強くなる。長い間、「モノ」を所有するためにお金を払うのが一般的だった。「モノ」が手元にこないと買った気がしないから、形のないものにお金を払うのはためらわれることが多かったように思う。それが、ネットワーク上を流れてくる情報をパソコンに記録するだけのiTMSの普及で、普通のこととして受け入れられてきた。そうすると、他の形の情報配信事業も軌道に乗りやすくなるだろう。

さらにいうなら、「モノ」の所有にこだわらない時代になっていくのかもしれない。たとえばテレビ。新型テレビの発売が盛んだが、私たちはテレビという「モノ」を必要としているのではない。その画面に映される「情報」が見たいだけなのだ。カメラだって、カメラという「モノ」の価値はたいしてなく、ただ映像をとらえるその「機能」が欲しいだけだ。だから、テレビもカメラも所有する必要はない。必要なときに使えるようレンタルできればそれでいい。「撮りっきりカメラ」はまさにそれを形にしたものだ。「モノ」の消費を中心にした経済に未来はないだろう。

さて、iTMSからダウンロードした音楽を私はどうしているかというと、まず最初にCD-Rに焼いて、ジャケットを印刷して、プラスチックケースに入れて、背表紙もつけて、棚に並べて悦に入っている。やっぱり、まず形ある「モノ」にしておかないと不安なんだな。