ソーラークッカー全国大会
第3回ソーラークッカー全国大会が浜松で開催された。これまで栃木など関東で開催されたときは、遠いのでなにも持って行けなかったが、今回は比較的近場なので車でクッカーを持参することができた。場所は浜松湖畔にある「地球のたまご」という(株)OMソーラーの施設内。
あいにく天気が悪く晴れる可能性が少なかった。しかも申し込みがうまくいっておらず場所が用意されていなかったので、屋内の片隅に店開きさせてもらった。後に少し晴れたときに外へ行ったが、太陽が出たのは短時間で、試運転はできなかった。
大会に行くといってもいったい何のために行くのか、と自問したとき、自分ならではの展示ができるとしたら、既存のクッカーを並べることではなく、独自アイデアの自作クッカーを披露することだろうと結論づけた。毎回新しいものを作るのは容易ではないが、今回は作ったばかりのフラットマルチミラークッカーのお披露目とした。ちょっと準備不足であまりうまくいかなかったが、多少は目を惹くことができたかと思う。
全国大会といっても、基本的に集まるのはソーラークッカー界の常連たちである。だから、ただ大会をするだけではいつもの仲間の年に一度の集会ということになってしまう。今回は、浜松市のはままつEスイッチフェスとの同時開催という設定で、そちらを見に来る人たちにソーラークッカーを知ってもらう機会となった。次の大会を大阪でどうだろうか、と打診されているが、タイアップするイベントがなければあまり意味がない。そもそも関東のソーラークッカーベテランたちが果たしてはるばる大阪まで来てくれるものかどうか。
すごい進化
(鈴木紀之著 中公新書 2017年)
この手のタイトルはこのごろ流行りだが、なんだかなぁ、とちょっと引きつつ読んでみたら、中身は進化生物学ど真ん中。それもわりとなじみのある話が多いなと思ったら、著者は私と同じ研究室の出身なのだった。
自然選択によって完璧に作り上げられた見事な進化の例、ではなく、むしろいい加減で不合理で不完全に見える現象が実は極めて合理的な進化の結果なのだ、という例を中心に据えている。そして、従来信じられてきた仮説がどうやら間違いで、まったく別の角度から新たな仮説を作り上げていく研究過程の醍醐味を、かなりわかりやすく書いている。まったくの素人がどれだけ面白く読めるのかはわからないが、最近不勉強な私は興味深く読むことができた。
とくに目を見張ったのは、性の進化に関する川津の新説だった。なぜオスがいるのか、なぜ無性生殖が可能なのに有性生殖がメジャーなのかという進化生物学最大の問いに対する、まったく新しいアプローチ。説明を読む限り、目から鱗で納得できるものだった。まだ広く受け入れられていないようだが、著者が推すだけのことはあると思った。
それで寿命は何秒縮む?
(半谷輝己著 すばる舎 2016年)
損失余命、つまりある物質などの毒性によってどのくらい期待寿命が縮むか、という尺度を使って、リスクの相対的な大きさを冷静に考えようよ、という本。以前から、環境の授業では損失余命を紹介して、化学物質汚染によるリスク(の小ささ)について話をしているので、個人的には納得の内容。で結局、タバコのリスク(1本吸うたびに12分の短縮)に比べれば、他は加工肉や残留農薬はもちろん放射線被曝だってほとんど問題にするようなものではない、というのも納得。
もちろん、それで安心するかどうかはあなた次第ですよ、ということを著者は繰り返す。「安全」(の度合い)は客観的に数字で表せるが、「安心」は主観的なもの。誰も他人に強制はできないので、自分で折り合いをつけるしかない。その折り合いをつけるのに、損失余命というモノサシがひとつの目安になるといいね、ということだ。
著者は「地域メディエーター」という肩書きで活動している。不安にかられた地域住民と専門家の間の知識・認識のギャップを埋める活動を意味するらしい。サイエンスライターやサイエンスインタープリターでは少しニュアンスが違うので、ということだ。肩書きは何にせよ、そうした役割をより多くの人が担えるようになる必要があるだろう。
幼年期の終わり
(アーサー・C・クラーク著 早川書房)
Kindle版を読了。
SFの古典として推薦された。原作は1953年とこれまた古い。
突如宇宙船が到来し、人類は宇宙に唯一の知的生物でないことを知る。力で抑圧するわけではないが世界に目を配り人間同士の対立を阻止する宇宙人。圧倒的に進んだ力を目の当たりにした人間の社会がどう変化するのか。そして宇宙人はなんのためにやって来たのか。
先述した春アニメ「正解するカド」の結末が見えなかったときに、この作品と同じようなオチではないかと推測する声があったが、たしかに通ずるものがある。結末は全然ちがったが。
これもまたその後の多くのSFに影響を与えた作品なのだろう。おもしろさはまあまあと言ったところだったが。