生き物たちのつづれ織り
(阿形・森 監修 京都大学学術出版会 2012年)
途中まで読んだ後ずっと積ん読になっていたのを、久しぶりに掘り出してようやく読み終えた。
京大理学部の生物研究者たちが、それぞれの研究内容を一般向けに紹介するために書いた本、だと思う。研究だけしていないで、その成果や意義や面白さを、ちゃんと一般の人に知らせないと、という最近の流れによるものなのだろう。
だがなぁ、これはどうにも中途半端に感じた。一人ひとりの書けるページ数が限られているのに、その分野の背景から最先端までをわかりやすく説明するというのはそもそも無理なのだ。書いた人によって上手下手はあるが、ほとんどの場合かなり難しくて理解が追いつかない。これで一般の人がわかると思っているのならとんでもない、というレベルの話が多かった。
下巻も買ってあるはずなのだが、あまり読みたくないな。
魚はエロい
(瓜生知史著 光文社新書 2016年)
「昆虫はすごい」がヒットしたせいかどうかは知らないが、こういう生き物のちょっと面白い話を紹介する手軽な本がいろいろ出ている。「すごい」ではもう目立たないので「エロい」ときたかと思ったが、基本的に繁殖生態の話なのでエロ中心に偽りはない。
いろいろおもしろい繁殖にまつわる話が読めると思っていたし、たしかにたくさんの話が詰め込まれているのだが、・・・なんだろう、あまり面白くないのだ。印象に残った話がひとつもない。最期まで読むのがやや苦痛ですらあった。多少生き物のことを知っていて驚きが少ないからだろうか。
たぶんそうではないのだろうと思う。こういうのは最初から「エロいぞ。すごいぞ。おもしろいだろ。」と言われながら話を読んだのでは興ざめなのだろう。淡々と、あくまでまじめに、知らん顔で語る話が、実はよく考えるとエロかったりとても変だったりしたときにはじめて「クスッ」という笑いが生まれるのではないだろうか。著者みずからが触れるにしても、まじめな描写の中に唐突に場違いなエロ描写があってこそのおかしさなのかもしれない。編集方針の失敗、のような気がする。
ただこのへんは人ごとではない。生物学の授業ではいろいろな生物の面白い姿や生態を紹介することが多いのだが、こちらが面白がっているほどには学生に通じていないのかもしれない。エロ方面もよく使っているので、気をつけないと。
もうひとつ残念なのは、「オールカラー版」ではあっても、ひとつひとつの写真がひどく小さくて、もしかしたらとても貴重な写真なのかも知れないがほとんどなにが写っているのかわからないということである。見えないのなら、わかりやすいイラストの方がよほどいいだろう。これも失敗。
正解するカド
今期放映中のアニメらしいがAmazon Prime Videoで随時公開されるのでもっぱらそっちで観ている「正解するカド」。
タイトルからしてなんだかわけがわからないし、画は美少年っぽいので、あまり期待せずに見始めたのだけど、これが予想外にぞくぞくするほど面白い。
ロボットものでも、戦争ものでも、萌えでもない。ハードなSFというのがいいのだろうか。派手な見せ場があるわけでもないのに、目が離せない。この先どう話が転がっていくのか、まったく予測できない。わくわくする。